謝罪
おとうさん、あやまってる。
ペコペコしてる。
なにをしたのだろう。
幼いころ、
父が人に謝罪をしてる、
そういう姿を見た。
わたしには、あんなに
こわいおとなはいないのに。
なにをしたのかな。
そう興味を持ったら、
とたんに
目の前が真っ暗に
なってしまった。
精神的にクラッと
きたのではなく、
物理的なもの。
うしろから母が
陽気な感じで私の目を
隠してしまったのだ。
それが忘れられず
私の気持ちは、
行ったり来たりしたけど、
ちょっとあとになって、
あの姿に、
えらいもんだな、お父さんは
と思った。
けれど、
一瞬だけどとても
尊敬したっていう気持ちを、
父が亡くなるまで
とうとう口に出せなかった。
なんとなくはばかれちゃった。
戦争は歴史的にもいつも
男が開始する、
そんなところがある。
なんでか自然に
競いあってしまう
性分らしいのよね。
そして女は誰に
習ったというわけではないのに、
子供をすぐ守る。
なんでか自然に
黙ってかばってしまう。
けれど子供は
素早くわかるのでは
ないだろうか。
人が謝る姿は
みじめなものなのではなく、
強くて、尊いものだってことを。
そして、いつまでも
忘れないんじゃないだろうか。