PIZZA

ずっとむかしの話です。

「イタリアンに行ってから、
そのまま映画へ行こう」と
友達と待ち合わせ。

ところが、
注文した私のピザが
なかなか出て来てくれません。

生地も手作りの、
くるくるっとやるような
こだわりのお店だとは
気がつかなかった
自分を責めました。
サラダなんかを、
ちんたら食べなきゃよかった、、、。

映画の開始時間は、
走れば間に合う。
と言うカンジ。
しかたなく、
こうしました。

「テイクアウトに
してもらえますか?」

「構いませんよ。」

2000円ほどのピザ一枚。
映画館へ持って行くことに
したのです。

ところが想像以上の
デリバリーサイズな箱。
暗闇の劇場に着いてから
ぶわ!と汗が出ました。

匂いをまわりに
振りまいてしまうのではないか。

なんだよ~、
ピザの匂いじゃないか~!
見てられねえぞ~!
誰だ誰だ!
と、なってしまうんじゃ?

しかしです。

なんと大丈夫だったのでした。

「ナチュラルチーズとは、
あんがい匂いを
放ちはしないものなのだ。」

その夜、初めて体感しました。
ブルーチーズでもない限り
くさみもないんですね。

前列の席の人の
フライドポテトの方が
ああ見えて強く、
まるで私たちをコモノだと
励ましてくれるかの
ようでした。

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