南伸坊さん その2

私が20代のころ、池袋の西武で
「パロディ講座」という半年間の催しがありました。
私はお惣菜屋さん(Pate屋)でバイトしながら、
(自分の書いた作品が評価されないかな)
などと思いながら、電車で通っていました。
講師は毎回変わるのですが、
実際行ってみたら、講師はどうやら
シロウトの作った作品など
興味もなさそうでした。当たり前ですよね。
自分の経歴などを語って、終わり。

しかし、一度南さんが講師という日が
ありました。
その授業こそがやっと、
「授業料、高かったけど、ここに通ってよかった!」
と、思える日でした。
なんと、ずうっとモノマネしてくれるんです。
いっさい笑いについての講義もなく、
難しげな分析もない。
むしろ一番ふざけてた授業。
でもその時私は、「笑い」っていう、
「実態もなく、はかなく一瞬で消えるもの」に
何が一番大切か、みたいなものだけ見えそうでした。
実践しかないのですね。


しかもその授業が終わった時です。
南さんは、
「なんだかあんたたち、暗いねえ?」
などと私たちを笑い、そのあと
「お茶でも飲むかい?」
と、ニコニコ誘ってくれたのです。

男女合わせて10人くらいいた、私たち生徒は
コーヒーをごちそうになりました。
この日の事、私はきっと忘れないだろう、
と思いました。
見習いたいとは思うのですが、
「見ず知らずの複数の人間をお茶を誘う」
って、なかなかできないもんですよね。
顔以上にでかい人だなあ~。

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