たまたま物語

先月、イラストレーターの和田誠さんと食事をする機会がありました。
和田さんはいつも、偶然にさあ~、とか、たまたま僕がそこにいてね~、
とか必ずのんびりした口調のワリには、へえ~っ!!と思うような、
不思議な縁が必ずついてまわる運命の人のようで、
私はその不思議をいつか言おう言おうと思っていたのでした。
ついこのあいだ田中真紀子さんの長女の問題で発禁になった
週刊文春(表紙・和田誠)は、いったいどんなひどい記事なんだ!
と思って読んでみたら、「ウッソ~。こんな程度のことだったの?」的な、
あんなに怒られたワリには薄っちい内容で、しかし、やたらあのかごの中の
鳥のイラストの表紙が、何度も何度もテレビの画面に出てたワケです。
きっとこのイラストにも偶然が?と思ってたら、なんと後記に
「表紙の鳥はウソという種類の鳥です」とあったので、
ほらまた、と心の中で思ったのでした。

「カゴの中に入れられた、嘘のような展開。
出版禁止になった本の表紙は、まるでそれを象徴しているかのようでした。」
私がニュースキャスターだったら、それを言ってCMにする。

そんな話をしたあと、しばらくして音楽の話になった。
和田さんが、「URCレコードっていう会社が昔あってさあ、僕がそのころ、
どうも若い人の音楽に対してアンテナがうとくなってるなあ、と感じたり
するとちょいちょいのぞいてたんだよ。レコード棚からひょいひょいっと
持ち上げて迷っていると、うしろっからいきなり声をかけられて、
『それ、俺のヤツだから買ってくださいよ』『うう~ん、
じゃあまあ、聞いてみるか。』なんて会話があったんだから、
ほんと、のんびりした時代だったよねえ、」と言う。
また小さな偶然で、URCといえば私は翌日、番組ではっぴいえんどの
細野さん・大瀧さん・鈴木さんとお会いする仕事があり、実はやや
緊張していたのだ。不思議なご縁だなあ、この話も。
とその日は思いながら帰りました。

番組はなんとか終了し、大瀧さんと初お食事をし、スルドイ見解に
舌を巻きつつも、ちゃっかり仕事のお悩み相談したりして、楽しかった。
緊張ゆるみっぱなし。
で、その番組の中で、映画「ロスト・イン・トランスレーション」に
はっぴいえんどの曲が使われているということがわかり、
「みんなで観に行きましょーよ!」と私が言ったら、
意外にも皆さんがのってくださったので、一青窈さんにも声をかけ、
翌週の月曜にはいい大人がズラーっと渋谷で待ち合わせし、
横一列に(細野・一青・鈴木・清水・ライター川勝)並んで、
映画を鑑賞したのでした。大勢で見るの、ひさびさでいいもんだった。
そのあと食事をしながら、ユーミン様の初期、矢野顕子さんの16歳時代、
当時の心境や街の周辺話など、聞きたいことだらけで、
私は興奮を抑えていたほど。そこにUFOや鈴木さんの煮魚の話など
めずらしいものもちりばめられ、とても印象的な一日となったのでした。

その翌週、オットが「タカダワタル的、という映画を観に新宿に行くけれど、
あんたも行く?」というので、一緒について行きました。
ひゃあ、こんな素晴らしい人がいたのか、ちっとも知らなかった、
と私はいたく感動し、帰りに高田渡さんの本(バーボンストリートブルース)
を買ったら、その表紙がまた和田誠さんで、
なんだか偶然は一巡したかのようだった。
本当に面白い本で、手にとってから駅まで、
久々に歩き読みまでしてしまいました。
立ち読みより難しいが、意外とできる行為。それが歩き読み。
そのまま知り合いの店でコーヒーを飲んでいたら、(飲み読み)
偶然にも隣の席に鈴木慶一さんがいらっしゃり、
私は驚いたなんてもんじゃなかった。しかも、鈴木さん
「オレさっきまで遠藤賢司とサッカーやってたんだ」とのこと。
私の短いURC物語はこの晩ケリがついた?のかもしれません。
和田効果。

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